s_outsider's blog

SNSでやると嫌われるニュース記事に対するコメントや日記を垂れ流したいために作ったブログ

最高学府はバカだらけ

たまにamazonレビュー等で酷評されており、読みたいが敬遠している本というものがある。本書がまさにそれだったが、たまたま古本屋で100円で売られており、著者を試す意味で購入。個人的には自分が以前から漠然と思っていることを言語化しており、当たりの本だった。

2007年9月初版発行なのに現在でも古さがない。これ以降、著者の作品はkindle版を購入しようと思う。*1

 

  • 大学関係者の言う「大学に入学する前の時点で学生の質が落ちている」という指摘は正しいと思えることがある。時代の変化に義務教育がついていけていないと感じる部分はある。その典型例が今話題になっている三角関数。よく「三角関数は実務でも使用するよ!」という理系諸氏の指摘があるが、ではなぜ業務でバリバリ使用するはずのPCのブラインドタッチを義務教育で必須科目にしないのか、疑問に思わないのか?三角関数を使用する会社だとしても、ちょっとした業務の効率化を実施するためにプログラミング言語を覚えることは重要なのでは?世の中にこれだけプログラマーが増え、IT需要はこれだけ拡大しているにも関わらず、なぜ三角関数だけは義務教育に残り続けてプログラミングは除外されるのか、明確な理由を説明できないのでは?
  • P82〜数ページにかけて大学乱立理由を述べているが、最大の理由は不景気と就職難では?というか、企業が自社の新卒主義を一向に改めずに、高卒や既卒よりも大卒をありがたがるからなのでは?
  • 不景気時に就職活動に失敗した既卒は、好景気時に採る新卒より優秀なのでは?コンビニバイトや居酒屋店員などの、非常に高いオペレーション/コミュニケーション能力を求められる職場で真面目に勤務している高卒フリーターを、正社員として採用しようという企業が現れないのは何故なのか?
  • 地方に新設された大学に閑古鳥が鳴いているというのは理解しがたい…地方には大卒者の需要はないのか?そもそも、地方に就職先がないからこういう事態になっているのか?
  • 情報公開は実社会では基本中の基本では?潰れるからという理由で情報公開から逃げられる企業はない(そして実際に潰れる企業は潰れる)。著者の言う「なぜ大学だけ情報公開しないのか」という疑問は心から同意する。一般社会を経験せず、学校を卒業してすぐ大学職員になるとこういう感覚が染み付くののか?
  • 本書第4章の両者の講話は著者の創作だとしても、現在の制度上ではこういった大学が出てきてもおかしくはないという警鐘を鳴らしているという点では価値がある。情報を隠蔽し続けても助成金を受け続けられる制度は変わるべきだし、なぜ変えられないのか疑問。
  • 2007年現在で大学職員が求人情報の手入力に忙殺されているという情報があるが、2015年では解消されていると信じたい。企業に自力で入力させ、職員は検閲する方針に舵を切れないのか?
  • 自分は高専卒だが、そういえば母校のパンフレットには必ず卒業後の企業名が過去5年公表されていた。各学科ごとに卒業生全員について、どの企業に何人就職したかを、5年分全部公開。*2なぜ高専にはできて大学にはできないのか?
  • 現役卒業率はそんなに重要なのか?就職先を完全に公開して卒業の価値を高くすれば、現役卒業率は重要ではないのでは?むしろ現役卒業率が(他大学に比べて)低いことは、卒業生は自校の卒業基準を確実に満たしていることを就職先の会社に示す証左になるのでは?データ改変などの小手先の手法を使って学生を騙して入学させるよりも、情報をすべて公開した上で優良企業に卒業生を送り込んだ方がより優秀な学生を集められるのでは?→なぜ高専にはできて大学にはできないのか?
  • 神戸の近隣の大学で学食等の施設の共同利用や大学を跨るサークルの許可がされているようだが、なぜ神戸より人口密度が高い東京の大学では進まないのか?  情報化が進んだ現代では、一般に事務処理は大規模化すればするほど規模の原理が働いて効率的になるはずでは?なぜ大学ごとに校則が違っていたり、事務処理や各種書類申請方法が異なっているのか、意味不明。提携を進めるべきでは?そもそも、紙の書類を窓口へ届けなければ受理されないということ自体、21世紀の大学としてナンセンスだと思わないのか?
  • 大学の補助金が削られていると各大学は嘆いているが、民間で成功しているコストダウン手法を取り入れ、経費を削減する等すればまだ何とでもなるのでは?工夫が足りないだけでは?
  • 著者は「日本の大学は社会との接点が極端に薄く」と言っているが、これは日本の幼稚園〜高校も同じでは? なぜ日本の幼稚園〜大学は社会との接点が極端に薄いのか?海外ではどうなのか?日本の一般的な大学と社会の接点は?接点の多い大学の好事例は?
  • そう言えば自分も学生の頃は新書どころが読書習慣もなかった。読書習慣がついたのは社会人になったあとの自分の無知さを知ってからだった…
  • 金沢工業大学の好制度だけど、本当はこういう大学が一般的になるはずでは?なぜ金沢工業大学でできて他の大学ではできないのか?  費用の問題?人材の問題?こういう制度があれば、大学はもっと学生を集められると思うのだが…*3*4

*1:…それにしても、著者を試すという意味では古本屋の持つ役割は大きいな。次からは購入する前に同じ著者の別の本を古本屋で買ってから判断しようか…?

*2:もちろん数字を合計すれば何人卒業したかがわかるので、一学科あたりの入学生から卒業生を引けば卒業率がわかる。不明なのは留年率や現役卒業率だけ。

*3: 高専もこういう制度はあったと思う(金沢工業大学ほど手厚くはないけど)

*4:新入社員と接していて、仕事でわからないことがあった際に彼らは「わからない」ということを恐れていると思われる時がしばしばあるが、  これは大学等で「わからない」と発言した瞬間見捨てられてしまうことを学習しているからこその現象なのか?